Taiki の政治ブログ

若者にとって政治を身近なものにしたいと考えている大学生

【歴史】史学科の学生が百田尚樹の『日本国紀』を読んだ感想

Taikiです。

今回は大学で歴史学を学んでいる僕が、話題の『日本国紀』を読んだ感想を書きたいと思います。

まず最初に余談ですが、皆さんは「紀」と「記」の違いを言っていますか?

中学生なんかは『古事記』『日本書紀』の漢字を間違えがちですが、しっかりと意味を抑えておきましょう。

「記」は、日記、記録などといった熟語からわかるように、出来事をそのまま書き残すときに使います。

「紀」は、風紀、紀行などからもわかる通り、流れや規則を表すときに使います。

ここで古事記を呼んだことがある人なら、「あれ、古事記ってほぼ神話みたいな話じゃなかったっけ?」て思いますよね。その通りで古事記は神話的な、事実ではない歴史を含んでいます。しかし、天皇の神格化のために「この話は歴史的な事実ですよ」という意味を込めて「記」が使われています。

逆に日本書紀は文献を調べ、調査した歴史に基づいて順序だてて作られているので「紀」が使われているのです。

つまり今回のテーマにもどると、『日本国紀』は「文献を調べ、調査した歴史に基づいた歴史書である。」ということを作者の百田尚樹さんは伝えようとしているのですね。さあどうなのでしょうか。

僕が『日本国紀』を読んでまず思ったのは初っ端から主張に矛盾があるということです。

この本は最初から最後まで「万世一系天皇素晴らしい!」という主張に終始しています。しかし途中で、「多くの学者が継体天皇の時に、皇位簒奪が行われたのではないかと考えている。私も十中八九そうであろうと思う。」と書かれています。

え?

万世一系じゃないじゃんwww

せめて、「王朝交代は起こったものの、継体天皇の時代から現代まで続く天皇家は歴史と伝統があって素晴らしいものだ。」という主張に変えるとか、そもそも王朝交代を否定するかしてくれないと話の整合性が取れないです。

大学のレポートであればこの時点で百田さんは単位を貰えなさそうですね。w

歴史的な記述の面で突っ込みどころは他にもたくさんありますが、僕が一番気になったのは参考文献が一冊も挙げられていないことです。レポートや論文を書いた際に参考文献を挙げなければならないのは大学生でも当たり前のことです。またどこかの論文や専門書から引用した部分は注を付けなければなりません。

ツイッターでこれだけイキれるんだったら参考文献の1つや2つ載せて欲しいですね。
事実と言いながらもそれを検証したり研究したりした論文も研究書も載せていないようでは何も信じられません。小説家なので妄想だけは得意なのでしょうか。

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こんな大学生でも当たり前のことすらできていないのに「日本通史の決定版!」などと世迷言をのたまっていては呆れてしまいます。

百田尚樹さんの支持者の中には、「本能寺の変があった、というのが事実である以上いちいち参考文献なんかいらない。百田さんの書いていることは事実なんだから参考文献なんて載せる必要がない。」(だいぶ前に見たツイートなので詳しくは覚えてないですがこんな内容)と言って熱烈に支持している方もいましたが、全くもって意味不明ですよね。

そのひとのアカウント見たら日本第一党支持者でした笑

本能寺の変については誰でも知っている事実なので詳細について記述しない限り参考文献は不要だとしても、百田尚樹さんはただ『日本国紀』で自分の政治的主張をごり押しして自己満足しているだけです。

もし彼の主張に正統性を持たせるのなら、先行研究や参考文献をしっかり挙げて根拠を示してくれなければただの妄想本、歴史小説に過ぎません。

別に歴史小説としてお話を楽しむだけならここまで叩かれずに済んだと思います。しかし通史の決定版などと謳っておいてアレでは、何度読んでも根拠が曖昧な百田さんの考えの押し付けにしか感じず、読んでてツラかったです。
もう二度と読まないので中古で売ろうかな。

 

今回は以上です。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
面白いな、タメになったなと思った方は投げ銭お願いします!

 

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